■南門(なんもん)【重要文化財】
「南門」は、治承3年(1179)創建とされる春日大社正面の楼門です。表参道を歩いて回廊内に入る時にくぐる門で、高さ12mの春日大社最大の門です。かつては藤原氏以外の方の参入門とされ、現在は本社の正門とされています。また、回廊には南門の他にも慶賀門等の門がありますが、各門はもともと鳥居だったそうです。
■幣殿・舞殿(へいでん・まいどの)【重要文化財】
南門をくぐり正面に見えるのが、「幣殿」と「舞殿」です。貞観元年(859)に創建され、東側2間が「幣殿」で、西側3間が「舞殿」です。「幣殿」は天皇陛下のお供え物である御幣物を一旦納める建物で、天井板は格天井となっており、「舞殿」と区別しています。「舞殿」は宮中伝来の御神楽(みかぐら)を行うための建物であり、雨天時に神楽や舞楽を奉納する場所とされています。
■砂ずりの藤(すなずりのふじ)
「砂ずりの藤」の名は、花の穂が地面の砂にすれるほど長いことに由来します。ノダフジの変種とされ、樹齢700年以上といわれる古い藤で、鎌倉時代後期(1309)に描かれた絵巻物「春日権現記」にも、このフジのことが記されています。春日大社では神紋にフジの紋様が用いられており、奈良朝以来境内のフジは大切にされています。
■林檎の庭(りんごのにわ)
「林檎の庭」は、祭典の際、舞楽や神楽が舞われる庭で、庭の東南隅に林檎の木があることから、このように呼ばれています。このリンゴ(当時はワリンゴ)の結実が多いか少ないかで、その年の農産物の豊凶を占ったとされています。元々の樹は平安末期、高倉天皇(1168~1179)の御献木と伝えられていますが、その後枯れ、今ある樹は昭和32年に献木されたものだそうです。
■中門・御廊(ちゅうもん・おろう)【重要文化財】
「中門」は、御本殿の直前にある楼門で、治承年間に創建されたと伝えられています。唐破風(からはふう)は当初からのものではなく、明治時代に取り付けられたものとされています。「中門」から左右に延びている建物が「御廊」で、軒には釣灯籠が釣られています。
現在は御本殿の祭典で神職の座る場所となっていますが、以前は僧侶が御経をあげる場所だったそうです。
■御本殿【国宝】
「御本殿」は、神護景雲2年(768)創建の春日造とされ、切妻造りの丹塗りで、四柱の神を祀るためほぼ同じ大きさの四棟が並んで建っています。「御本殿」は、小さな方形の方1間で、井桁に組んだ土台の上に立ち、正面に簀子縁(すのこえん)と木階(もっかい)が設けられています。また、屋根は檜皮葺きで上に千木と堅魚木が置いてあり、向拝(こうはい)と呼ばれる片流の屋根が母屋(もや)の前に付いています。各殿間及び両脇には絵を描いた板塀が付け連ねてあります。中世以降、ほぼ20年毎に造り替えられており、平安時代の意匠がよく残されています。
・御祭神:
・第一殿:武甕槌命(たけみかづちのみこと)様
・第二殿:経津主命(ふつぬしのみこと)様
・第三殿:天児屋根命(あめのこやねのみこと)様
・第四殿:比売神(ひめがみ)様
■岩本神社(いわもとじんじゃ)
・御祭神:表筒男命(うわづつのみこと)様
中筒男命(なかづつのみこと)様
底筒男命(そこづつのみこと)様(住吉三神)
・御神徳:住吉明神様です。
和歌の神様、お祓いの神様です。
■本社大杉(ほんしゃおおすぎ)
「大杉」は、樹齢千年ともいわれ、鎌倉時代後期(1309)に描かれた絵巻物「春日権現験記」にその姿が描かれています。樹神信仰から、伊吹(槙柏)の大木を生かすため、直会殿の屋根に穴をあけています。
■直会殿(なおらいでん)【重要文化財】
「直会殿」は、貞観元年(859)創建とされ、その名が「貞観儀式(しょうがんぎしき)」(871)に記されています。東を正面とする南北8間、東西4間の広大な素木造建築で、康治2年(1143)の修理の際に南庇と敷板(床)が設けられたそうです。東の2間が母屋となり、春日祭には勅使以下が直会の儀を行うそうです。平安期以降、ここで法華八講(ほっけはっこう)が盛大に行われたことから「八講屋」の呼称もあります。
■捻廊(ねじろう)【重要文化財】
「捻廊」は、治承3年(1179)の創建とされ、内侍殿から御廊をつなぐ渡り階段です。古くは春日祭に奉仕する斎女や内侍(ないし)が昇殿するための登廊でした。この建物は斜め階段が付けられているため、ほとんどの部材が平行四辺形ですが、江戸時代の名工左甚五郎(ひだりじんごろう)が、現在のように斜めに捻れたものに改造したと伝えられています。
■内侍殿(ないしでん)<移殿>【重要文化財】
「内侍殿(移殿)」は、かつて御神前で奉仕をする内侍(女性)が控えていた場所だったそうです。また、20年に一度の造り替えの時には御本社と若宮の神様をお移しする移殿とされています。東側が正面で西側の廂の間が若宮の移殿となります。
■風宮神社(かぜのみやじんじゃ)
・御祭神:級長津彦命(しなつひこのみこと)様
級長津姫命(しなつひめのみこと)様
・御神徳:風神様で息を司られることから生命の神様です。
お祓いの神様、そして祈願を取り次がれる神様です。
■七種寄木(なないろのやどりき)
「七種寄木」は、カゴノキを母樹としてツバキ、ナンテン、ニワトコ、フジ、カエデ、サクラの七種が共生する珍しい木です。風宮神社の傍らであることから、古来、風神の威徳によっていろいろな種子が運ばれたと伝えられています。また、やどり木であることから、子授けの霊木と崇められており、紙捻(こより)に願い事を書いて結びつける信仰があります。
■宝庫(ほうこ)【重要文化財】
「宝庫」は、大同2年(807)の創建と伝えられ、古くは「宝蔵(ほうぞう)」あるいは「神庫(しんこ)」とも呼ばれ、春日祭の時に御本殿をお飾りする御神宝が納められています。厚板で組み上げられた朱塗りの校倉造の建物で、普段は封印されています。
■椿本神社(つばきもとじんじゃ)
・御祭神:角振大神(つのふりのおおかみ)様
・御神徳:春日様の御眷属の神様で、隼の明神とも申し上げ災害をお祓い下さる神様です。
■藤浪之屋(ふじなみのや)
「藤浪之屋」は、北回廊の東角にあたり、かつては神職(禰宜)の詰所でした。現在は、幽玄の世界である「万燈籠」の雰囲気を体験できるように、燈籠がゆらめく空間に改装され特別公開されています。
■多賀神社(たがじんじゃ)
・御祭神:伊弉諾命(いざなぎのみこと)様
・御神徳:生命を司る延命長寿の神様です。
■回廊(かいろう)【重要文化財】
「回廊」は、平安末期の治承3年(1179)に創建された、複廊形式の三棟造(みつむねづくり)です。連子窓(れんじまど)で中央を仕切り、それを中心に左右の屋根裏に各々棟をつくり、更に大棟をつくる構造で、同種の遺構はほとんどなく貴重なものとされています。
■慶賀門(けいがもん)【重要文化財】
「慶賀門」は、治承3年(1179)の創建とされ、西回廊にある三つの中で南側にある門です。この門は、古来正式な参入門とされ、御蓋山を正面に望んで参入することから、御本殿が造営される前から御蓋山が神山であったことを感じることが出来ます。「慶賀門」は、藤原氏一門の門とされ、他の二門と異なり天井に格組天井(ごうぐみてんじょう)を貼った立派な構造になっています。
■清浄門(せいじょうもん)【重要文化財】
「清浄門」は、西回廊の中央に位置し、かつては僧正門と呼ばれ、僧侶が参入していた門です。現在は神職の通用門となっています。
■内侍門(ないしもん)【重要文化財】
「内侍門」は、西回廊にある三つの門の中で北側にある門で、かつては宮中より遣わされた斎女や内侍が出入りしていたと伝えられています。
御本殿の参拝を終え「南門」を出ると、「若宮神社」へ続く御間道(おあいみち)が目に入ってきます。この参道から「紀伊神社」に至るまでの「若宮15社めぐり」については、後日にさせていただきます。
(参照:春日大社ウェブサイト・案内説明・パンフレット)
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